東洋インキとDICが軟包装フィルムのリサイクル性を測る業界共通プロトコルを策定。脱墨と剥離の試験条件や報告様式の標準化が、包装設計、材料選定、ブランドオーナーの調達判断にどう影響するかを実務の視点で読み解く。評価結果を横並びで比べられる意味と、今から備えるべき点も整理する。

ニュースの概要

artienceグループの東洋インキとDICが、軟包装フィルムのリサイクル性を測るための共通プロトコル(試験の手順書)を開発した。対象は、印刷インキを取り除く脱墨と、貼り合わせたフィルムの層をはがす剥離の二つである。試験に使う設備や条件、試料の扱い方をそろえ、脱墨や剥離の効率、再生プラスチックの品質を判断する基準も定める。さらに、結果を同じ書式で報告する様式まで整える点が特徴だ。これまでは企業ごとに試験の条件が違い、数値を並べても優劣を比べにくかった。共通の物差しができれば、包装加工会社は材料や処理条件を選びやすくなり、ブランドオーナーも設計の判断材料を得られる。

引用元: 日本で軟包装フィルムのリサイクル評価に関する業界共通プロトコルを策定(Packaging News)

分析・見解

ライバル同士が試験の物差しをそろえた意味

インキ大手二社が足並みをそろえた点に、まず注目したい。これまで軟包装のリサイクル性評価は、会社や団体ごとに試験のやり方が異なっていた。洗浄液の濃度、温度、攪拌(かくはん=かき混ぜること)の時間が違えば、同じフィルムでも結果は変わる。そのため、A社の「脱墨できた」とB社の「脱墨できた」は、そのままでは比べられなかった。

欧州ではリサイクル設計の指針や認証が先行し、評価の枠組みが整いつつある。日本は技術力が高い一方、各社の試験が独立して存在していた。今回のプロトコルは、その差を埋める土台になる。

脱墨と剥離、どちらも再生品質を左右する入口

軟包装は、性質の違う樹脂を何枚も貼り合わせて作る。ポリエチレンは密封、ポリエステルや延伸ポリプロピレンは強さや印刷のしやすさ、バリア層は中身の保護を担う。この多層構造が、リサイクルを難しくしてきた。

層がはがれなければ、素材ごとに分けて再生できない。インキが残れば、再生樹脂は色がくすみ、においも出やすい。つまり脱墨と剥離は、再生プラスチックの品質を決める入口にあたる。この二つを数値で測れるようにしたことが、プロトコルの核心である。

報告様式の統一が「評価できない製品」を浮かび上がらせる

試験条件の統一以上に効くのは、報告様式の標準化だと考える。たとえば脱墨率が九割と書かれていても、何を分母にしたのか、どの色のインキをどれだけ使ったのかが分からなければ意味がない。様式が決まれば、こうした記載漏れを防げる。

ここに独自の視点を一つ加えたい。標準化は、優れた製品を目立たせるだけではない。試験にかけにくい複雑な構成を「評価できない製品」として可視化し、設計の見直しを迫る。ペットボトルでは、業界団体の自主設計ガイドラインが長年、キャップやラベルの設計を変えてきた。軟包装でも同じ流れが起きる可能性は高い。

実験室の高評価と回収現場のあいだにある距離

一方で、実験室の評価と回収現場の実態には隔たりがある。家庭から出た軟包装は汚れや異物が混じり、素材も雑多である。試験で高い評価を得ても、回収と選別の仕組みがなければ再生は進まない。プロトコルは設計側の改善を促す道具であり、回収側の整備と車の両輪で進める必要がある。

インキの側にも課題が残る。脱墨しやすいインキは、耐摩擦性や耐水性を損なう恐れがある。食品包装では、中身へのインキ成分の移行(染み出し)を避ける安全性も外せない。リサイクル性と機能性の両立が、インキ開発の腕の見せどころになる。今後は国際的な評価手法との整合や、結果の第三者確認が焦点になるだろう。

ビジネスへの影響

材料選定と設計変更は「試験の数値で語る」時代へ

包装加工会社にとって、最初の実務は自社の主力構成を新プロトコルで測り直すことだ。結果を共通様式でまとめておけば、ブランドオーナーへの提案を数値つきで行える。口頭で「リサイクルしやすい」と言うより、はるかに説得力がある。

設計面では、層の数を減らす、同じ系統の樹脂でそろえる、はがれやすい接着剤を選ぶといった改善が検討対象になる。ただし、バリア性や賞味期限を犠牲にしては本末転倒である。変更の前後で評価結果と保存試験を並べて判断したい。

取引先の調達基準に先回りして備える

ブランドオーナーや小売の調達担当者は、今後サプライヤーに評価結果の提出を求める可能性がある。すぐに義務化されなくても、環境配慮を掲げる企業の仕様書に採り入れられる流れは十分ありうる。今のうちに試験の委託先、費用、所要日数を確認しておけば、見積もりや納期に影響が出ても慌てずに済む。

コスト面では、試験費用と設計変更費用が先に発生する。一方で、評価結果を持つ企業は、入札や継続契約で選ばれやすくなる。短期の負担と中期の受注機会を天秤にかけ、主力製品から順に進めるのが現実的だ。

今すぐ着手できる三つの準備

一つ目は、主要製品の構成表を整理すること。二つ目は、インキと接着剤の仕入先に脱墨・剥離のデータがあるかを尋ねること。三つ目は、評価結果を営業資料に載せる際の表現ルールを決めることだ。誤解を招く表現は信頼を損ねる。数値の範囲や条件を明記する姿勢が、長期の取引を支える。

中小の加工会社は、単独で試験設備を持つのが難しい場合もある。業界団体や材料メーカーの設備を共同で使えるか、早めに相談しておきたい。

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