ベトナムが進める拡大生産者責任(EPR)の運用改善を手がかりに、包装材リサイクルを機能させる費用負担・回収網・監督の設計を解説し、日本企業が今から備えるべき実務対応を整理します。

ニュースの概要

ベトナムでは、製品を作った企業や輸入した企業が、使い終わった後の包装材の回収とリサイクルにも責任を持つ「拡大生産者責任(EPR)」の実施を促す動きが続いている。報道によれば、制度を紙の上の義務で終わらせず、実際に包装材を回収し再資源化する仕組みと、それを支える政策の手直しが焦点になっている。具体的には、企業が負担する費用の使い道、回収と選別を担う事業者との連携、実績の報告と確認の方法といった運用面の整備が課題だ。制度を始めた国ほど、法律ができてからが本番になる。今回の動きは、東南アジアの環境規制が「作る」段階から「回る」段階へ移ったことを示している。

引用元: EPR(拡大生産者責任)の実施促進:包装材のリサイクルを支援するための仕組みと政策の改善。(Vietnam.vn)

分析・見解

義務化の次に問われるのは、回収が実際に回るか

EPRとは、製品を市場に出した企業が、使用後の回収や処理の費用と責任を負う考え方である。ベトナムは2022年の環境保護法で、包装材などの生産者と輸入者にリサイクル義務を課した。しかし義務を書くことと、現場で袋やボトルが集まることは別の話である。

家庭ごみの分別が定着していない地域では、包装材の多くが混ざった状態で捨てられる。そこから価値のある素材を取り出すのは、手間も費用もかかる。今回の改善策が、制度の枠組みよりも運用に重心を置いているのは、この現実があるからだ。

お金の流れを決めない制度は、現場で止まる

EPRで最も揉めるのは費用の扱いである。企業が自社でリサイクルするのか、業界団体のような共同の組織にお金を払って任せるのか。ここが曖昧だと、費用は払ったが回収は増えない、という事態になる。

ドイツやフランスは、共同組織が企業から集めた費用を回収網に配分する方式で成熟してきた。フランスでは包装の素材や重さ、リサイクルしやすさに応じて拠出額を変える「ボーナス・マルス」(=有利と不利の差をつける仕組み)も導入されている。リサイクルしにくい複合素材ほど高くつけば、設計段階から単一素材への切り替えが進む。ベトナムが同様の差をつけられるかは、今後の細則しだいだ。

非公式の回収業者を取り込めるかが成否を分ける

ベトナムの都市では、バイクや手押し車で空き缶やペットボトルを集める個人の回収業者が、実質的なリサイクルの担い手になっている。こうした非公式の担い手は、価値の高い素材だけを拾い、薄いフィルムや菓子袋は残しがちだ。

制度設計で見落とされやすいのは、この人たちを排除せず、報告と支払いの仕組みに組み込む視点である。インドの一部の州では、非公式回収業者を登録し、集めた量に応じて企業の拠出金から報酬を出す試みが進む。回収実績を数字で証明できれば、企業側も義務の達成を示しやすくなる。

報告の信頼性が、制度全体の信用を決める

最後の論点は監督である。企業が「これだけリサイクルした」と申告しても、裏付けがなければ水増しが起きる。重量の記録、処理業者の受領証、第三者の確認といった基本的な証跡が必須になる。

アジアではタイやインドネシアも同種の制度を準備しており、地域全体で報告様式が似通っていく可能性が高い。早く準備した企業は、複数国で同じ様式を使い回せる。逆に各国ごとに対応を迫られた企業は、管理の負担が膨らむ。

ビジネスへの影響

東南アジアで売る企業は、包装の設計から見直す

ベトナムに製品を輸出する、または現地で包装済み商品を製造する企業は、拠出金の対象になる可能性が高い。まず自社の包装材を素材別、重さ別に棚卸しし、リサイクルしやすい順に並べておくとよい。複合素材を単一素材に変えるだけで、将来の費用が下がる場合がある。包装設計の変更は半年から一年かかるため、細則の確定を待たずに検討を始める価値がある。

日本の容器包装リサイクル法の経験を、交渉の材料にする

日本企業は、容器包装リサイクル法に基づく再商品化の費用負担を長年続けてきた。この経験は、現地の業界団体や政府との対話で強みになる。費用の算定方法、報告様式、共同組織の運営といった実例を示せば、現地の制度に合理的な設計を提案できる。

社内の環境データを一本化し、複数国に備える

実務で最も手間がかかるのは、国ごとに異なる報告の対応である。製品ごとの包装重量、素材、出荷国を一つの台帳にまとめておけば、どの国の様式にも転用できる。年次報告に間に合わせるには、調達、物流、環境の担当者が同じ数字を使える体制が欠かせない。

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