日本ハムが「シャウエッセン」など50品の包装を見直し、年間約66.8トンのプラスチックを削減する。中身を変えず、長さや厚み、トレイの大きさを詰める手法の意味と、他社が学べる実務のヒントを読み解く。

ニュースの概要

日本ハムは、ソーセージや中華総菜、冷凍食品など50品を対象に、包装に使うプラスチックの量を順に減らすと発表した。「シャウエッセン」「中華名菜」「石窯工房」などが含まれる。袋の長さや幅を詰める、フィルムを薄くする、トレイのサイズを変えるといった地道な見直しで、年間で約66.8トンの削減を見込む。実施は2026年9月から順次で、10月26日には取り組みを知らせる新聞広告も出る。同社は、過剰包装の抑制や家庭ごみの減少にもつながるとしている。素材を紙に替えるような大きな転換ではなく、いまある包装を細かく削る方向の施策である。

引用元: 日本ハム、50品の包装見直しで年間約66.8トンのプラスチック削減(Jiji Press / 日本ハム株式会社)

分析・見解

新素材ではなく、寸法を削るという選び方

この取り組みで目を引くのは、新しい素材に飛びつかなかった点である。包装のプラスチックを減らす方法は大きく二つある。一つは紙やバイオマス素材への置き換え、もう一つは今の素材のまま量を減らすことだ。日本ハムが選んだのは後者である。

置き換えには、食品を傷めない性質(=酸素や水分を通しにくい性質)の確認、設備の入れ替え、価格の上昇といった壁がある。一方、長さや幅を数ミリ縮める作業は、既存の製造ラインを大きく変えずに進めやすい。派手さはないが、実行の確実さでは有利である。

66.8トンという数字を、身近な単位で読む

66.8トンと聞いても実感はわきにくい。仮に1袋あたりのフィルムを2グラムとすると、約3,300万袋分に当たる。これは国内の年間プラスチック容器包装の排出量、およそ数百万トン規模から見れば小さな割合である。

ただし、数字の価値は総量ではなく、積み重ね方にある。50品という広い範囲で、しかも売り場の主力商品を含めて動かしている。1品で数トンを減らすより、多品目で薄く削るほうが、社内の仕組みとして定着しやすい。この点が、単発のキャンペーンとの違いである。

包装を詰めると、売り場と物流にも効いてくる

包装の縮小は、ごみ削減だけの話ではない。トレイが小さくなれば、段ボール1箱に入る数が増える可能性がある。輸送のトラック台数や冷蔵庫の棚の占有面積にも、じわじわ効く。つまり環境対応でありながら、コスト削減の面も併せ持つ。

見落とされがちなのが、家庭側の変化である。冷蔵庫に収まりやすくなる、ごみ袋に入れるときのかさが減るといった小さな利点は、消費者が自分ごととして受け取りやすい。環境の話は遠く感じられがちだが、台所の実感に結びつくと伝わり方が変わる。

見直しの限界と、これから問われること

一方で、包装を薄く小さくする作業には限界がある。薄くしすぎれば破れやすくなり、食品の傷みや店頭での破損が増える。結果として食品ロスが増えれば、環境面では逆効果である。包装は中身を守る役目を持つため、削減量と鮮度保持のつり合いを数字で示せるかが問われる。

今後は、同業他社も同じ動きを迫られるだろう。ハム・ソーセージ業界では、多くの商品が似た形の袋やトレイを使う。一社が見直しを公表すれば、取引先の小売店や消費者から「うちの商品はどうなのか」と問われやすくなる。包装の量を競う局面が、静かに始まったとみてよい。

ビジネスへの影響

自社の包装を棚卸しする手順

食品や日用品を扱う企業が、まず取り組めるのは現状の把握である。商品ごとに、袋の寸法、フィルムの厚み、トレイの大きさ、箱の余白を一覧にする。そのうえで、中身との隙間が大きい商品から優先して見直す。

日本ハムのやり方を借りるなら、素材の転換は後回しにして、寸法と厚みの調整から始めるのが現実的である。試作の費用が小さく、結果も早く出る。削減量を重さで記録しておけば、後で対外的に説明する材料にもなる。

コスト削減と、環境訴求を両立させる伝え方

包装の縮小は、資材費や輸送費の削減につながる。ただし、値上げの代わりに内容量を減らす「実質値上げ」と受け取られる危険もある。内容量は変えずに包装だけを減らしたことを、はっきり明示する必要がある。

日本ハムが新聞広告で周知する点も参考になる。静かに仕様を変えるより、理由と効果を先に伝えたほうが誤解を防げる。広告に限らず、商品ページや店頭の掲示でも、削減量を具体的な数字で示すと信頼につながる。

取引先との調整で見落としやすい点

包装を変えると、小売店の棚の寸法や、物流倉庫の保管方法にも影響する。変更の数か月前に、取引先へ仕様の変更予定を共有しておきたい。包装資材の仕入先とも、薄いフィルムの強度試験を一緒に進めると、品質トラブルを防げる。社内では、品質管理、調達、営業、広報が早い段階で同じ表を見ることが、スムーズな実施の条件になる。

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